社内弁理士のチャレンジクレーム

チャレンジクレームとは「実務家の間に通用する俗語で『だめもと』のチャレンジ精神で審査を受ける限定の少ない広いクレーム」をいいます。社内弁理士が「だめもと」で抽象的な理論と実務の架橋を目指します。

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概念と経験 

「概念と経験の循環」は重要であるということを知財業務のアナロジーで説明したい。まず概念とは経験を抽象化したものといえる。この抽象化を帰納という。そして経験とは概念を具体化したものといえる。この具体化を演繹という。

概念と経験は循環する。経験→抽象化→概念→具体化→経験→・・・という具合である。この循環または往復が重要であるという点は清水幾太郎『論文の書き方』(岩波書店)や清水氏の弟子である高根正昭『創造の方法学』(講談社)などで指摘されている。高根氏は"知的創造とは結局、抽象と経験の間の往復を自由に行う知的活動である"と書いていてこの往復を非常に重視している。

この「概念と経験の往復」の重要性を「発明の発掘/抽出」と「出願」という知財業務とのアナロジーで説明したい。

第一に「発明の発掘/抽出」においては、発明者の頭にある具体的な技術を発明という抽象的な技術思想に抽出する必要がある。発明の本質のみを抽出することができれば広い請求項が作成できる。つまり「発明の発掘/抽出」は発明の本質の抽出(発明の抽象化)である。言い換えれば実施例からの帰納である。

第二に「発明の出願」においては、抽象的な発明である請求項と具体的な発明である実施例の両方を文章化する必要がある。このとき請求項に表現された発明は当初発明者の頭にあった具体的な技術の範囲を超えることがある。これがその発明に他の応用例を追加することである。むしろこのような発見がなければ「発明の発掘/抽出」は成功とは言えないかもしれない。一方で請求項と実施例は対応していなければならない。いわゆるサポート要件である。よって抽象的な請求項からそれをサポートする実施例(応用例)を作成しなければならない。これが発明の具体化である。言い換えれば請求項からの演繹である。

このような実施例→抽象化→請求項→具体化→実施例(応用例)→・・・という循環がよりよい明細書を作成するための一つの方法である。この点は知財の実務経験のある方々には理解していただけるのではないだろうか。

さて再び「概念と経験」に戻って考えてみたい。明細書の場合、発明を抽象化しなければ広い実施をカバーできない、応用例を追加できない。これを「概念と経験」に当てはめると「経験」を概念化しなければ(過去の経験と異なる)「新たな経験に対処できない」、「新たな経験が予測できない」ということである。

企業知財を担当してきて自分の部署が「新たな経験に対処できない」という実感は強く持っている。従来型の業務(発掘・出願・中間・他社権利処理など)については過去の経験にしたがって業務をやればよい。しかし、部署にとって新しい業務(標準化の推進・オープンソース・知財価値評価など)についてどのようにやっていけばいいのか考えることができないでいる。そこで他社の経験を参考にしようとする。それはもちろん必要なことだが「過去の経験」がない「新しい経験」に対し「概念」から考え対処するという志向が足りないように感じる。
本ブログの目的「理論と実務の架橋」とは「概念と経験の往復」のことである。これを目的とした背景は上述のような自分の実感にある。

なお、以上の議論を敷衍すると、日本が「キャッチアップ型」から「フロントランナー型」へ変化することが難しいのも日本が「概念」に弱いためではないかと思える。
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[ 2009/02/02 23:04 ] 知的生産 | TB(0) | CM(0)
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