社内弁理士のチャレンジクレーム

チャレンジクレームとは「実務家の間に通用する俗語で『だめもと』のチャレンジ精神で審査を受ける限定の少ない広いクレーム」をいいます。社内弁理士が「だめもと」で抽象的な理論と実務の架橋を目指します。
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MicrosoftとTomTomの和解と対Linux戦略 

2009/3/3のエントリ2009/3/10のエントリで紹介したマイクロソフトとTomTomの訴訟であるが、和解が成立したようだ(3月31日付ITMedia記事参照)。今回はこの和解についてマイクロソフトの対Linux戦略の観点から述べたい。

この訴訟は提訴特許にTomTomが製品に組み込み販売しているLinuxが侵害すると思われるマイクロソフトの特許が含まれていたため注目された。この特許はFAT(File Allocation Table)に関するものである。これによりマイクロソフトの対Linux戦略が訴訟という公開の手段により初めて行われることとなった。従来この戦略はクロスライセンス契約の交渉という非公開の手段により行われていたと考えられる(2009/3/3のエントリ参照)。

マイクロソフトの対Linux戦略とはライセンシー(本件ではTomTom)に「GPLの条件と矛盾する制約を課された状態でプログラムを頒布する」ことによりGPL違反を犯かせることである。これによりLinuxの頒布を制限し、Windowsの独占を維持することができる(2009/3/10のエントリ参照)。

今回の訴訟でマイクロソフトの対Linux戦略は成功したのだろうか。マイクロソフトのプレスリリースによれば「本和解契約を締結することによりTomTomがGPL違反になることはない」とのことである(マイクロソフトのプレスリリース参照)。

The agreement includes patent coverage for Microsoft’s three file management systems patents provided in a manner that is fully compliant with TomTom’s obligations under the General Public License Version 2 (GPLv2).



なぜGPL違反にならないのか詳細な理由は分からないが、TomTomがそもそもFAT特許のライセンスを受けていない可能性がある。その理由はTomTomが2年以内にFAT特許を回避するよう設計変更(design around)するということが明らかにされているためである。その2年以内の侵害についてもTomTomのエンドユーザが直接保護されるという。これもTomTomはライセンシーではないかのような表現だ。

TomTom will remove from its products the functionality related to two file management system patents (the “FAT LFN patents”), which enables efficient naming, organizing, storing and accessing of file data. TomTom will remove this functionality within two years, and the agreement provides for coverage directly to TomTom’s end customers under these patents during that time.



TomTomがライセンスを受けなくともエンドユーザが保護されることはありうる。例えばエンドユーザに対する権利不行使の条項を契約に含めることである。

このように見てくると今回の訴訟でマイクロソフトはTomTomをGPL違反に陥れることができなかった。よって今回の訴訟に限っては戦略が成功したとはいえないのではないだろうか。また今後マイクロソフトのライセンス交渉の相手方企業はGPL違反について警戒してくるはずである。よってこの訴訟は失敗のようにも思える。

ただ、Linuxに対する特許侵害訴訟を提起した時点で注目が集まりマイクロソフトの対Linux戦略が明らかになることは彼らにも予想ができたはずである。彼らはGPL違反の種まきは十分済んだと考えているのかもしれない。
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[ 2009/03/31 23:55 ] 知財 | TB(0) | CM(0)

TLOが失敗する理由 

先日、ある先輩にある大学の研究会に誘っていただいた。その研究会が「産学連携による技術移転」に関する活動をしているためである。

何も分からず行ってみると研究会に参加されていたメンバーの方々が大変な人たちだった。その大学の出身で経営者や大学教授の方々だ。(当たり前だが)皆さん非常に深く広い知識と経験をお持ちで、情熱的かつ合理的であった。

研究会での議論の内容を書くのは適切ではないと思われるので、今回はあるメンバーの方がされた産学連携についての発言を紹介したい。

その発言の趣旨は「TLOが失敗する理由は(弁理士など)特許実務家の人たちを集めてやっているからだ」というものである。加えて「東大TLOが成功した理由はリクルートの人を連れてきたからだ。産学連携による技術移転には特許実務の能力よりもマーケティング力が重要である。特許実務の能力だけがある人たちは世の中にたくさんいる。」という。<リクルートの人>とは東大TLO山本貴史社長のことだろう。

では「産学連携による技術移転」の具体的な内容とは何だろうか。東大TLOのサイトで大学発明が企業に移転されるまでの具体的なステップを紹介している。以下の5つのステップである。①発明届出(職務発明としての認定を含む)、②出願検討(特許性・市場性の検討)、③特許事務所へ出願依頼、④マーケティング、⑤ライセンシング。

④以外は特許実務といえる。実際に筆者も企業知財の担当者として経験したものだ。しかし問題なのはその④である。ここで「④マーケティング」とは大学発明について「市場の将来性を想定して、開発力と販売力をもち、さらに、技術のコマーシャライズに最もモチベーションの高い企業を特定化して1社1社と直接交渉を行」うことである(東大TLOのサイト参照)。これは普通の特許実務家には難しいだろう。例えば世界レベルの広いコネクションがなければできないためだ。

また先の研究会では「特許実務家の場合、大学内でのコネクションすらない」という問題も指摘されていた。

特許実務すらまともにできない自分にとっては<厳しい現実>という印象だ。ただ産学連携の現実を大学の立場から考えれば「どこからお金を引っ張ってくるか」という問題が一番大きいのだろうから、産学連携のステップのうち「④マーケティング」が一番重要なのも当然のようにも思える。<厳しい現実>を認識できたという意味でもこの研究会に参加でき有意義であった。
[ 2009/03/30 22:02 ] 知財 | TB(0) | CM(2)

Chemical Brothers「Star Guitar」 

※本エントリは知財とは直接関係がありません。

今回はMichel GondryのMusic Videoを紹介したい。彼の代表作といえるChemical Brothers「Star Guitar」と「Let Forever Be」、Daft Punkの「Around The World」を。Chemical Brothersの2曲は動画が埋め込めなかったためリンク先にアクセスいただきたい。

ヨーロッパの鉄道好きとしては「Star Guitar」最高!

[ 2009/03/29 23:33 ] 音楽 | TB(0) | CM(0)

知的財産権侵害罪の適用状況 

2009/3/24のエントリにおいて知財法における侵害罪の構成要件該当性の不明確さについてふれた。実際に適用された事例はどれくらいあるのだろうか。今回はこの点について書きたい。

個人的な印象としては商標権侵害罪や著作権侵害罪による容疑者の逮捕というニュースはよく耳にするが特許権侵害罪ではあまり聞かない。

調べてみると平成18年版の「警察白書」「知的財産権侵害事犯の法令別検挙状況の推移(平成13~17年)」という表が掲載されていた。この表によると印象どおり商標法と著作権法が知財侵害事犯の大半を占めている。例えば平成17年度では知財全体の件数で約98%と人数で約95%を商標法と著作権法が占める。これに不競法を加えるとほぼ100%である。一方、特実意の三法ではほとんど適用された事例がない。

またH18年法改正の際、日弁連が提出した意見書(pdfファイル)は「他刑との併合罪を除けば知的財産権侵害行為に対して、実刑判決が下された事例は皆無に等しい。」という。

ちなみにH18年法改正には刑事罰の上限が引き上げが含まれていた。先の意見書は刑事罰の上限引き上げに反対するものである。
[ 2009/03/29 22:44 ] 知財 | TB(0) | CM(0)

Michel Gondryのテレビコマーシャル 

※本エントリは知財とは直接関係がありません。

このブログでこれまで何度かMusic Videoを紹介している。自分にとってMusic Videoの監督といえばフランスのMichel GondryとUKのChris Cunninghamである。今回はMichel Gondryの(Music Videoではなく)テレビコマーシャルを紹介する。Air France「Le Passage」とMotorola RAZR2「Experience」とLevi's「Drugstore」。

「Le Passage」のラストは何度見てもついニヤリとしてしまう。
[ 2009/03/28 23:31 ] 音楽 | TB(0) | CM(0)

刑法学から見た知的財産法 

先日、法学研究科の院生の方と飲む機会があった。そこで、おもしろく聞いた話が「刑法学的に知的財産法は構成要件がもっとも不明確な特別刑法の一つではないだろうか」というものだ。「特別刑法」とは「犯罪およびそれに対する刑罰を規定する法律であって、刑法(刑法典)以外のものをいう。」(wikipedia参照)

確かに知財法において刑罰が科せられるもののうち、代表的なものである侵害罪を例にとっても、(例えば特許権の)権利範囲の不明確さからどのような行為が侵害になるのか(構成要件に該当するのか)不明確といえるのだろう。

その方は上に述べた不明確さから「刑法学的観点からの知財法を研究はこれからだろう」という。再び侵害罪を例にとると、侵害罪を研究するということは特許権や著作権の侵害の有無を研究することとほぼ同義であり、そのような研究は知財法の学者が行っているものだといえる。そうであれば「刑法学的観点からの知財法を研究はこれから」というのも当たり前なのかもしれない。ただ侵害罪以外の知財法の刑罰について研究するという余地もないのだろうか。例えば知財法に特徴的な詐欺行為罪(特許法197条)である。

というようなことを考えていたところ、刑法学者の和田俊憲慶応大学准教授の詐欺行為罪についての論文(pdfファイル)を発見した。

この論文で議論されているのは「詐欺行為罪を二項詐欺(刑法246条2項)とは別に設ける必要があるのか」という存在意義の問題である。ちなみに和田氏は冒頭から詐欺行為罪を「あまり注目されないこの犯罪類型」と呼んでいる。

論文の本題とは関係ないが筆者としては「おわりに」の部分に共感した。

実益はさほどないと思われるが、通常気にせぬところのつながりから視野が広がるのは興味深く、これはそれをささやかにしたためた小品である。

[ 2009/03/24 22:11 ] 知財 | TB(0) | CM(2)

早稲田大学COEセミナー 

早稲田大学COEによって3・4・5月と3か月連続で行われるセミナーを紹介する。テーマはそれぞれ「フェアユース」「各国特許庁間の審査協力」「日本企業のフォーラムショッピング」とのことだ。セミナーの参加費は無料。

2009/03/27
RCLIP第26回研究会「フェアユースと著作物使用者の権利」
【時間】18:30~20:30
【場所】早稲田大学早稲田キャンパス8号館3階会議室
【テーマ】
「フェアユースと著作物使用者の権利」

【報告者】
張 睿暎(早稲田大学《企業法制と法創造》総合研究所助手)

【要旨】
既存の著作権制度の中で、著作物使用者(ユーザ)が論じられる場面は少なく、ユーザはただの受動的な意味の「消費者」、もしくはコミュニケーションにおける送り手の相手としての「受け手」としてしか認識されなかった。しかし、急速な技術発展により、著作物の創作と消費、そして二次創作のパターンが変化し、ユーザの地位も変化している。現代のユーザは著作物をただ消費するのではなく、文化的創作物や情報を受信し、インタラクティブな相互作用を通じて更なる創作までする「創作者/ユーザ」になったのである。
本報告では、ユーザの利益が委縮されている現状を指摘し、ユーザの権利のために使われてきたフェアユースの役割を踏まえた上で、既存の枠に当てはまらなくなった「ユーザ」概念の変化を分析し、ユーザの権益を保護するための理論構成を試みる。

【対象】お申込みはこちら>>>
https://www.21coe-win-cls.org/gcoe/info/reservation.php?sid=10561



2009/04/13
RCLIP第27回研究会「これからの特許庁間の審査協力と企業の国際特許戦略」
【時間】18:30~20:30
【場所】早稲田大学早稲田キャンパス8号館3階会議室
【テーマ】「これからの特許庁間の審査協力と企業の国際特許戦略」

【報告者】高倉成男(弁理士・鈴榮特許綜合事務所)

【要旨】
世界各国の知的財産制度は、適切な保護レベルで調和していることが望ましい。そのためには、各国の国内法を規律する国際法の制定が必要である――。こうした考えに立って、日米欧は、1980年代後半からマルチの条約づくりを進め、その努力は、TRIPS協定、特許法条約、著作権等に関する新条約として結実した。
ところが、皮肉なことに、知財制度の重要性が各国によって強く認識されればされるほど、マルチの条約交渉は、前に進めるのが難しくなってきた。実体特許法条約交渉は、長く膠着状態にある。その一方、外国特許の取得コスト、特許庁の出願滞貨、不正商品等による損害、訴訟リスクなど、解決すべき国際問題はいぜんとして多い。
このような状況下にあって、近年、主要国では、二国間・複数国間の相互利益を基調とする実務協力(審査結果の交換等)の推進、および現行法を前提とするエンフォースメント(裁判、水際等)の充実に向けた取り組みが加速化している。
本報告では、特許分野を中心に、こうした最近の動向を概観し、わが国としてバイ・プルリ・マルチの交渉をどのようにハンドリングしていくのがいいのか考える。また、新しい特許審査協力スキーム下における出願人の国際特許戦略の多様化についても考える。

【対象】お申込みはこちら>>>
https://www.21coe-win-cls.org/gcoe/info/reservation.php?sid=10563



2009/05/09
RCLIP国際知財戦略セミナー
「日本企業と特許訴訟:フォーラムショッピングによる攻撃的特許戦略」
【時間】13:00~17:20
【場所】早稲田大学早稲田キャンパス小野記念講堂(法務研究科地下2階)
【テーマ】
「日本企業と特許訴訟:フォーラムショッピングによる攻撃的特許戦略」
【要旨】
パテントトロールの横行や技術標準に関する特許の悪質な権利行使等、日本企業が国際市場で特許紛争にまきこまれるリスクは日々増大しています。紛争を有利に解決するためには、日本企業が、このようなリスクをいち早く察知し、最も有利な裁判所で訴訟を開始すること鍵となります。本セミナー第一部では、米国法曹雑誌で何度もトップ特許訴訟エキスパートと選ばれているフィネガン事務所が独自のネットワークで集めた特許権者の勝訴率・損害賠償額・弁護士費用等の統計データに基づき、同事務所の弁護士が特許権者・被疑侵害者に有利な米国連邦裁判所におけるフォーラムショッピング戦略について講演します。
更に第二部では、このネットワークに参加する日本・中国・英国弁護士が欧州アジアの主要裁判所における統計に基づき、フォーラムショッピング戦略を講演し、訴訟と和解交渉のコーディネーション等、実践的方策についてパネルディスカッションを通じて検討していきます。

【テーマ及び講演者】
13:30 開会の辞 総合司会 高林龍 早稲田大学 法学部 大学院法務研究科 教授
13:40 第一部:米国連邦裁判所におけるフォーラムショッピング戦略
講演者
John Livingstone氏、Finnegan Henderson, Tokyo Office
14:30 質疑応答
14:45 休憩
15:00 第二部:欧州アジア主要国裁判所におけるフォーラムショッピング
司会:竹中俊子 ワシントン大学ロースクール教授
パネリスト:
Xiaoguang Cui氏、 Sanyou law firm, Beijing
村田真一氏、兼子・岩松法律事務所
Richard Price氏, Taylor Wessing, London Office
John Livingstone氏、Finnegan Henderson, Tokyo Office
16:30 討論
17:00 質疑応答
17:15 閉会の辞
18:00 懇親会:「西北の風」(大隈タワー,なお詳細は後日お知らせします。)

【対象】お申込みはこちら>>>
https://www.21coe-win-cls.org/gcoe/info/reservation.php?sid=10564

[ 2009/03/23 23:25 ] 知財 | TB(0) | CM(0)

supercell feat.初音ミク『supercell』がオリコン初登場4位 

※本エントリは知財とは直接関係がありません。

supercell feat.初音ミク『supercell』がオリコン初登場4位だそうだ(3月10日付日経トレンディ記事参照)。
「初音ミク」も「電車男」やケータイ小説の流れのひとつと思われる。一言でいえばアルビン・トフラーの「プロシューマー」である。「プロシューマー(prosumer)とはアルビン・トフラーが著書「第三の波」の中で示した概念で、消費者(consumer)と生産者(producer)を組み合わせた造語であり、消費者が生産に加わることをいう」(wikipedia参照)。

このように概念ひとつでとらえ措いておくのもよいが、実際に経験してみるのもいいだろう。現場主義だ。2ちゃんのまとめサイトではこのニュースに関し「初音ミク」の<信者とアンチ>というよくある構図で言い合いが繰り広げられており、「第三の波」の現場も結局こんな感じだよな、と思う。

本作の代表曲「メルト」をはっておく。筆者も聴いたみたものの嗜好がだいぶ離れており1曲聴くだけで正直ツライ。結局、ロボ声で思い出したProdigyやKraftwerkという自分好みの音楽を聴く方向に行ってしまった。Prodigy「no good」(1994)とKraftwerk「musique non stop」(1986)をはっておく。
[ 2009/03/22 22:54 ] 音楽 | TB(0) | CM(0)

Article One Partners社の新しい知財ビジネス 

こちらのブログ(「知財情報室」)経由で興味深い会社を知った。それはArticle One Partnersというアメリカの会社である。今回はこのAOP社による新しい知財ビジネスを紹介したい。

2009年1月30日付のO'Reillyの記事で「創業2ヶ月」とあるので、この会社はまだ創業4ヶ月ほどのスタートアップ企業である。

この会社がどのようにビジネスをしているのか。以下の3つの方法で利益を上げるという。

①特許侵害訴訟の提訴特許など注目特許の番号をAOP社のサイトに掲載し懸賞金(5万ドルが一般的)をかけて先行資料を公募する。応募者から送られてきた先行資料をAOP社の特許弁護士が評価する。AOP社は有効な先行資料になると評価された先行資料を侵害訴訟の被告や特許権者に販売する。先行資料は被告の場合、無効資料として、特許権者の場合reissueのために使われる。
②AOP社のサイトに特許番号を掲載し先行資料調査をした結果、有効性が確認された有力特許を発見した場合、AOP社はその特許を保有する企業に投資する。
③AOP社が企業からの先行資料調査依頼を請け負う。

一般的な知財実務における先行資料調査は企業から調査会社へのクローズドな依頼に基づいて行われる。AOP社はその先行資料調査をオープン化したといえる。またオープンな先行資料調査プロジェクトである「Peer-to-Patent」のビジネス版ともいえる。このAOP社に「Web2.0」の提唱者Tim O'Reilly氏が投資しているのもうなずける。

AOP社の創業者Cheryl Milone氏はBounty Quest社というスタートアップ企業の元社員だという。Bounty Quest社は2000年代前半にAOP社と同様のサービスを行っていたが、時代に先行し過ぎたのかうまくいかなかったらしい。「Web2.0」は2004年ころ話題になった概念である。それを考えるとBounty Quest社の先進性に驚かされる。

アメリカからは相変わらずこのような新しい知財ビジネスが出てくる。すばらしいことだ。

なお、筆者の関係している事件の提訴特許もAOP社のサイトに掲載されていた。企業知財の方は自社に関係する事件の特許がないかチェックされてはいかがだろうか。AOP社が先行資料を売り込みに来るかもしれない。

また特許調査に自信のある方は懸賞金に応募するという手もあるだろう。5万ドルが手に入るかもしれない。
[ 2009/03/22 22:09 ] 知財 | TB(0) | CM(0)

USPTOによるルール改正についてのCAFC決定は一部認容・一部差戻し 

周知のとおりUSPTOによるルール改正はヴァージニア東部連邦地裁で差し止められている(Tafas v. Doll事件)。差し止められたルール改正は①continuationの制限、②RCEの制限、③クレームが一定数を超える場合のESD(Examination Support Document)の提出である。その控訴審でCAFCが決定を下したという(3月20日付Patently-O記事参照)。

決定の内容は「①は米国特許法120条に反しUSPTOの権限の範囲外、②③はUSPTOの権限の範囲内である。」というものだ。つまりCAFCは①continuationの制限は認めず、②RCEと③ESDは認めたということだ。

米国特許法120条の内容は一言で言うと「一定の条件でcontinuationを認める」である。よってこの決定は当たり前の結論のようにも感じる。ただ決定の内容をちゃんと読むといろいろあるのかもしれない。

また先の記事へのコメントでは「この事件はUSPTOが申し立てなくともen bancに行くだろう」という意見が多かった。en bancとは判事全員で審理される事件(または判事全員の合議体)をいう(wikipedia参照)。

en bancに行くのか、行く場合どのような決定が下されるのか注目される。特に①continuationの制限については2009/3/17のエントリで紹介したMark Lemleyスタンフォード大学教授が指摘するように濫用の問題があるため注目される。
[ 2009/03/21 22:55 ] 知財 | TB(0) | CM(0)

IBMによるSun Microsystems買収と知財戦略 

IBMがSun Microsystemsを買収する交渉を進めているという(3月19日付ITMedia記事参照)。今回はこの買収について知財的に考えたい。

しかし、まずサン・マイクロシステムズについて。Sunに対し筆者は好感を持っている。筆者のSunに対するイメージは(既に過去のものだが)「毒舌経営者スコット・マクニーリと天才コンピュータ技術者ビル・ジョイの会社」というものである。マクニーリの毒舌について、例えば2002年の日経BPの記事にこうある。

米サン・マイクロシステムズのスコット・マクニーリ会長(写真)は3月7日,来日記者会見の場で競合他社を痛烈に批判した。中でも米IBMと米マイクロソフトに対する批判は手厳しかった。ともに「人類対IBMグローバル・サービス」,「人類対 .NET」との主張を繰り返した。

IBMに対しては,「IBM製品のファミリー・ツリーを見ると,自分たちのものだけでサービスを展開しようとしている。彼らの営業担当者は問題を解決するか,顧客の財布にカネがなくなるまで吸い尽くす」と批判。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NC/NEWS/20020307/2/


今回の買収相手IBMが<人類の敵>にされていて楽しい。ただマクニーリ自身は「いい人」そうであった。というのも以前マクニーリの講演をどこかで実際に聞いたことがあるが、フランクでユーモアがあり魅力的なものであった。

一方、ビル・ジョイは「BSD」という現在でも広く使われているUNIXを開発した人物である。Javaの開発にも大きな影響を与えているという(wikipedia参照)。UNIXはLinuxの源流であり、ビル・ジョイによるUNIXに対する貢献が現在のコンピュータに与えた影響は大きいのではないだろうか。

またSunには「The Network is the Computer」というモットーがあり、1980年代前半にこのような概念を提唱していた先進性には驚かされる。

さて今回のIBMによるSunの買収であるが、IBMの狙いは何だろうか。筆者にはSunのOSS(Open Source Software)言い換えるとオープン系の知的財産を手に入れるという点があると思われる。SunのOSSとは主にはプログラミング言語のJavaである。他にはデータベースマネージメントシステムの「MySQL」やオフィススイートの「OpenOffice」である。

SunはJavaについては経営的にうまく取り扱えなかったという印象を筆者はもっている。最初SunはJavaで顧客を囲い込もうとしたが無理だと分かり、結局はオープン化した。そして現在、Javaの技術自体は非常に普及したが、収益面では成功とまでは言えなかったようだ。

そこでIBMの登場である。IBMは以前はプロプライエタリだけであったが、現在ではオープン化により収益を上げるという手法を学んだ。例えばIBMは2004年に自身が保有していたJavaの統合開発環境「Eclipse」をオープン化した。2005年にIBMのテクノロジー&ストラテジー部門バイスプレジデントWladawsky-Berger氏は次のように言っている。

むかし--たとえば10年前なら、企業は自社で開発したものはすべてプロプライエタリでなくてはいけないと考え、さらに知的財産(Intellectual Property:IP)はどんな場合にも保護しなくてはならないと考えていた。だが現在では、外部コミュニティのエネルギーを活用したいと思う場合、知的財産に対するプロプライエタリなアプローチと、よりオープンで協力的なアプローチとのバランスをうまく取らなければならなくなっている
http://japan.cnet.com/news/ent/story/0,2000056022,20082472,00.htm


IBMは自身がもつオープンな技術を収益化するというノウハウをSunの知的財産、特にJavaに適用しようとしているのではないか。これが筆者が考える知財的に見たこの買収の狙いである。

同様なことを専門家も指摘している。IT専門の調査会社ITRの内山悟社長という方だ。

IBMはJavaの開発コミュニティーなどSunが持つ無形の価値を評価したのではないでしょうか。Sunは一時期サーバが売れなくなって、Javaをオープン化することで復活したという面があります。でも収益面でJavaがどれだけ貢献したのかは未知数。オープンソースコミュニティーを新たなビジネスとかお金にかえる力はSunにはありませんでした。

IBMもアプリケーションサーバ用の開発環境としてEclipseを開発していますが、オープンソースでベンダーが収益を上げるのはこれまで難しかった。オープンソースは無視できない存在になっています。ライセンスはフリーでも、特定のベンダーがサポートすることで儲けるといった収益構造のモデルを1つつくるべきかもしれません。
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0903/19/news054.html


一方、Javaその他SunのOSSはIBMには魅力的ではないという指摘もある(3月19日付コンピュータワールドの記事参照)。

買収するメリットの1つは、IBMがパートナーとして投資してきたJavaにあるのだろうか。JavaはIBMにとって魅力的な技術に思われるが、うわさされている65億ドルという買収金額ほどの価値ではないと見る向きもある。実際に、Javaフランチャイズは頭打ちの状態であり、その価値を大きく落としている。
http://www.computerworld.jp/news/trd/138969.html


現時点では買収自体が確実ではなくIBMの狙いは憶測に過ぎない。ただIBMがSunを買収し、Javaを使って何らかの新たなオープン化戦略を取るのであれば、それは知財的に大変楽しみである。
[ 2009/03/20 22:46 ] 知財 | TB(0) | CM(0)

MicrosoftとLexmarkが特許クロスライセンスを締結 

マイクロソフトとLexmarkが特許クロスライセンスを締結したという(3月18日付けITMedia記事参照)。

2009/3/10のエントリで述べたようにマイクロソフトのクロスライセンスの狙いはライセンシーにGPL違反をもたらすような契約を締結することだと考えられる。今回のLexmarkとの契約に関しては「Linux」という言葉は出てこない(マイクロソフトのプレスリリース参照)。

しかし、先月(2009年2月)マイクロソフトがブラザー工業と結んだクロスライセンス契約についてはプレスリリースに「Linux」という言葉が登場する。

本契約を締結したことで、ブラザー工業は、デジタル複合機、プリンターならびに一部のLinuxベースの組み込みデバイスなどを含む、現在から将来にわたる同社の製品に、マイクロソフトの特許を使用できるようになります。
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3623

ブラザー工業とLexmarkはともにプリンタメーカといえるが、契約に違いがあるのだろうか。それは現時点では不明である。今後明らかになるか注目したい。

なお、「一部の」Linuxベースの組み込みデバイスという点も気になる。Linuxベースの組み込みデバイスでも許諾製品から外されている製品があるのだろうか。
[ 2009/03/19 22:02 ] 知財 | TB(0) | CM(0)

Mark Lemleyスタンフォード大学教授のWeb講義 

先日、勤務先の先輩と飲んでいて「ネット上に米国の大学での講義動画がある」という話題が出たので、自分でも調べてみたところスタンフォード大学ロースクールMark Lemley教授のWeb講義が見つかったので、今回はそれを紹介する。

Lemely教授は知財分野でよく引用される著名な学者だ。以前はFish & Richardsonに所属し最高裁の法廷にも立った実務家(litigator)でもあるという。そのLemley教授のデューク大学ロースクールでの講義(2004)の動画を見つけたのでリンク(rmファイル)を張っておく。教授は当時カリフォルニア大学バークレー校教授という肩書きだった。

http://realserver.law.duke.edu/ramgen/spring04/lemley.rm

約70分の動画だ。講義が40分で質疑が30分である。

この講義で議論しているのは米国特許法における「continuation」の濫用である。デューク大学のサイトに以下のようなLemley教授の発言があり楽しい。

One of the oddest things about the United States patent system is that it is impossible for the U.S. Patent and Trademark Office to ever finally reject - or grant - a patent application. The culprit is the "continuation" application [・・・].


このようにLemley教授は米国特許制度においては「continuation」があるので特許庁は出願を最終的に拒絶(や許可)できないという事実をいきなり提示している。この事実は知財の実務家には当たり前のように感じられる。しかし、ふと考えると当然おかしい。特許庁が出願を拒絶も許可もできないのだから。筆者はこのような問題提起が好みだ。

この講義でLemley教授はKimberly Moore CAFC判事(当時はジョージメイソン大学教授)と共同で行った実証研究に基づき「continuation」が濫用されていると主張している。例えば98回も「continuation」をした出願があるという。このような実証研究が先の米国特許庁のルール改正における「continuation」の制限などにつながったのだろう。

Lemley教授の話すテンポは結構速い。しかし発音は聞き取りやすい。また内容について前提知識があったこともあり、なんとかついて行くことができた。米国特許制度全体の勉強にもなるので、興味のある方は視聴してはいかがだろうか。
[ 2009/03/17 23:03 ] 知財 | TB(0) | CM(0)

知的財産管理技能士検定2級特例講習@国学院大学 

先日知財検定の特例講習というものを受講してきた。弁理士試験を受験していたときに「今の知識があれば勉強しなくても受かるんじゃないか?」ということで知財検定を受験していた。その知財検定が国家資格になったという。そこで以前の合格者はこの特例講習を受講し試験に合格すれば国家資格に移行できるそうだ。友人から現行知財検定2級のテキストを借りて、試験前日からすき間時間に読んでいたが、そのような予習はこの講習には結果として不要だった。今回はこの特例講習について記しておく。

場所は国学院大学の渋谷キャンパスであった。弁理士試験も知財検定も同じ場所だった。当日ここは同時にTOEICの会場であったようでTOEICの係員に間違えて誘導されてしまった・・・。

3月は知財業界にとっても忙しい月だとは思うが、講習には300人ほどが参加していた。まあ知財業界外の人も相当いるのだろうが。

時間は計4時間で講義3時間と試験1時間という構成だった。講師は一色国際の弁理士の人であった。かなり話し慣れていて上手であった。

講義内容は弁理士試験の勉強と基本的に重複している。知財検定は企業知財向けということだと思うが、特に企業知財独自のものはない。弁理士試験の勉強をしたことがある人たちにとっては非常に簡単に感じるだろう。独禁法や種苗法があるところがちょっと違うくらいか。

試験内容も同様に簡単であった。特に講師の人が講義中に「ここが出題されますよ」と示してくれるので、この試験で不合格になる人は相当少ないのではないか。合格ラインが95%などでない限り。
[ 2009/03/16 22:27 ] 知財 | TB(0) | CM(0)

Jazzanova「Caravelle」 

※本エントリは知財とは直接関係がありません。

2009/3/9のエントリで紹介したドイツのレーベルSonar Kollektivを主宰するのはJazzanovaというプロデューサーユニットである。今日は知財検定の試験だったが、試験前に聴くとよさそうな曲として彼らの「Caravelle」(1998)を思い出した。クールでハイテンションな高速ジャズボッサがイイ。Jazzanova初期の代表作だ。

ネットを見ていてJazzanovaの最新作が出ていることに気づく。何曲かか聴くとこれはノーザン・ソウルっぽい。「Caravelle」のようなJazzanovaらしさは薄い気がするが、これはこれでいいんじゃないだろうか。その中から「I Can Show」(2008)という曲を。

ノーザン・ソウルをwikipediaで調べるとFour Topsが元祖だとあったので「I Can't Help Myself」(1965)を。Four Topsはもちろんモータウンで、モータウンはもちろんデトロイトだ。こうしてまたもやデトロイトに辿りついてしまった。
[ 2009/03/15 23:36 ] 音楽 | TB(0) | CM(3)

休眠特許が多い要因は侵害立証性のない特許が多いこと 

2009/3/9のエントリに続き今回も侵害立証性(侵害立証容易性)について述べたい。今回は休眠特許(未実施特許)との関連である。

「休眠特許が多い」という問題はよく指摘されている。東京工業大学の田中義敏准教授は特許庁の調査で70%(100万件中70万件)が休眠特許だという。特許庁がどうやって統計を取るのか疑問はあるが、休眠特許が多いという一般的な認識はあると思われる。

休眠特許が多い要因として権利化の段階において、特許性に比して侵害立証性に対する配慮が少ないという点を指摘したい。侵害立証性がない特許は第三者に活用できないため自社で実施しない限り休眠特許となるためだ。権利化段階における侵害立証性への配慮とは、「もしこのクレームで登録になったとして、第三者が実施した場合に侵害立証はどのように行えるか?」と問うことだ。

これは田中氏の「権利化における新規性・進歩性はいかにあるべきか、といったテクニックに知財部門の問題意識が偏っている」という指摘を裏からみたものともいえるだろう。また田中氏が休眠特許の多い要因として指摘する「知財部門にとって権利化が至上命題になっている」こともあるだろう。

なお自社で実施する発明についても同様に侵害立証性に配慮すべきだ。具体的には「第三者がこのクレームの特許を持っていたら、第三者は自社の侵害を立証できるか?」を問うべきだ。2009/2/13のエントリでのべたように侵害立証性がない発明であれば特許出願はせず営業秘密として管理すべきである。
[ 2009/03/13 23:17 ] 知的生産 | TB(0) | CM(2)

無線LANにおける特許問題 

無線LANにおいて特許問題が起こっている(3月6日付日経BPの記事参照)。今回は今まで当ブログでふれたきた視点からこの記事を読んでみたい。

無線LANに今,特許問題という暗い影がさしている。オーストラリアの国立研究機関であるCommonwealth Scientific and Industrial Research Organisation(CSIRO)と,カナダのWi-LAN Inc.がそれぞれ,「自社の特許を侵害している」として無線LAN関連機器を手がけるメーカーなど多数の企業を米国で訴えているのだ。両者の一方,あるいは両方から訴えられた企業の数は合計で30社を超える。

これは2009/3/9のエントリで述べた「侵害立証性のあるところ事件あり」の例証といえる。無線LANはIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)の802.11シリーズで定められている標準化技術であり、標準化技術は侵害立証性があるためだ。

今回の特許問題は,標準化団体が特許ポリシーとして求めてきたRANDというあいまいなライセンス条件が,製品を手掛けていない特許権者との契約において無力であることを明るみに出したのである。

これは2009/3/6のエントリで述べたRAND条件の不明確さの問題である。ただRANDと不実施主体(NPE:Non Practicing Entity)であることとは別問題だ。実施主体同士であってもRAND条件の不明確さの問題はある。先のエントリで紹介したVizioと船井電機の件がまさにそうだ。

バッファローの知的財産担当者は,冒頭の発言の後,こう続けた。「CSIROは化学分野などに強い,れっきとした研究機関。今回問題になっている069特許も,自分たちで発明して出願したものです。『パテント・トロール』という言葉に明確な定義はありませんが,CSIROに対してそういう表現は使うべきではないと思っています」。

筆者としては2009/2/16のエントリで述べたように「パテントトロールとは濫用的な権利行使をする者」と定義すべきと考えている。この例ではCSIROの特許の侵害性・有効性や実施料率を考慮して判断すべきである。

自分で発明して出願すれば濫用的な権利行使をしてもパテントトロールに該当しなくなるのでは問題である。例えば、かの有名なレメルソンもパテントトロールに該当しなくなる。
[ 2009/03/12 22:21 ] 知財 | TB(0) | CM(0)

Googleがボイスメール特許訴訟で和解 

Googleがボイスメールに関する特許で個人から提起されていた訴訟で和解したという(3月10日付ITMedia記事)。

このニュース自体に変わった点はないが、筆者が不思議に思ったのはGoogleは「特許訴訟に対し和解ではなく徹底的に戦う」という方針を打ち出しているという記事が出たばかりであったためだ(3月5日付business-i記事)。

米連邦裁判所の訴訟事件一覧表によると、同社は現在24件の特許訴訟を抱えている。一昨年までの4年間は毎年訴訟で和解をしてきたが、昨年は一度も特許訴訟で和解をしていない。


「和解しない」というポリシーは先の記事でも言われているように現実的ではないと筆者も思っていた。しかしGoogleのことなので「何かあるだろう」と思っていたが、やはり「和解しない」というポリシーは撤回した(もしくは最初から存在しない)ようだ。
[ 2009/03/11 23:41 ] 知財 | TB(0) | CM(0)

Christian Prommer's drumlesson『Drum lesson Vol.1』 

※本エントリは知財とは直接関係がありません。

2009/3/9のエントリで紹介した動画で思い出したのが以下の動画である。Truby Trioなどで活動しているChristian Prommerの「Christian Prommer's drumlesson」というプロジェクトである。これはクラブミュージックをジャズとして演奏するというものだ。以下の動画はロンドンのCargoというクラブでのライブ映像。曲はデトロイト・テクノの創始者の一人Derrick May(Rhythim Is Rhythim)による1987年の名曲「Strings of Life」。これはイイ!

アルバムはドイツのクラブ系ジャズレーベルSonar Kollektivから出ている。

オリジナルもはっておく。

[ 2009/03/10 23:18 ] 音楽 | TB(0) | CM(0)

MicrosoftとTomTomの訴訟とGPL違反 

2009/3/3のエントリで紹介したマイクロソフトとTomTomの訴訟であるが、この訴訟の本質はマイクロソフトから受ける特許のライセンスがTomTomのGPL違反につながることである。この点が日本の記事でも紹介された(米国の記事の翻訳だが)(ZDNet3月9日付記事)。今回は特許ライセンスとGPL違反の関係について述べたい。

まずGPLについて。GPLとはGNU General Public LicenseというOSSライセンスの最も有力なものの一つである。wikipediaは以下のように説明している。

GPLは、プログラムの著作物の複製物を所持している者に対し、概ね以下のことを許諾するライセンスである。

1.プログラムの実行
2.プログラムの動作を調べ、それを改変すること(ソースコードへのアクセスは、その前提になる)
3.複製物の再頒布
4.プログラムを改良し、改良を公衆にリリースする権利(ソースコードへのアクセスは、その前提になる)
http://ja.wikipedia.org/wiki/GNU_General_Public_License

LinuxはGPLに基づいて頒布されている。つまりLinuxを利用している企業はGPLのライセンシーである。

次にGPL違反となる理由について。先のZDNet記事はSamba(Linuxと同様に著名なOSS)の開発者Jeremy Allison氏の発言を引用している。この発言の出所はAllison氏がイギリスのIT系ジャーナリストによるブログへつけたコメントである。

まずAllison氏は次のように言う。

この事件はクロスライセンスですべてうまくいくケースではない。TomTom(や他の企業)が特許クロスライセンスを締結すれば(Linuxカーネルが適用している)GPL v2の7条によってLinuxカーネルを頒布する権利を完全に失う。

ここでGPL v2の7条は以下のものである(オープンソースグループの日本語訳)。

7. 特許侵害あるいはその他の理由(特許関係に限らない)から、裁判所の判決あるいは申し立ての結果としてあなたに(裁判所命令や契約などにより)このライセンスの条件と矛盾する制約が課された場合でも、あなたがこの契約書の条件を免除されるわけではない。もしこの契約書の下であなたに課せられた責任と他の関連する責任を同時に満たすような形で頒布できないならば、結果としてあなたは『プログラム』を頒布することが全くできないということである。例えば特許ライセンスが、あなたから直接間接を問わずコピーを受け取った人が誰でも『プログラム』を使用料無料で再頒布することを認めていない場合、あなたがその制約とこの契約書を両方とも満たすには『プログラム』の頒布を完全に中止するしかないだろう。
http://www.opensource.jp/gpl/gpl.ja.html

この条項から「特許ライセンスにより、GPLの条件と矛盾する制約を課せられた場合、頒布が全くできなくなる」ことが分かる。 GPLの条件とは例えば「複製・頒布するにはソースコードを開示しなければならない」という条件である(3条)。ここでGPL v2の3条は以下のようになっている。(オープンソースグループの日本語訳)。

3. あなたは上記第1節および2節の条件に従い、『プログラム』(あるいは第2節における派生物)をオブジェクトコードないし実行形式で複製または頒布することができる。ただし、その場合あなたは以下のうちどれか一つを実施しなければならない:

a) 著作物に、『プログラム』に対応した完全かつ機械で読み取り可能なソースコードを添付する。ただし、ソースコードは上記第1節および2節の条件に従いソフトウェアの交換で習慣的に使われる媒体で頒布しなければならない。あるいは、

b) 著作物に、いかなる第三者に対しても、『プログラム』に対応した完全かつ機械で読み取り可能なソースコードを、頒布に要する物理的コスト を上回らない程度の手数料と引き換えに提供する旨述べた少なくとも3年 間は有効な書面になった申し出を添える。ただし、ソースコードは上記 第1節および2節の条件に従いソフトウェアの交換で習慣的に使われる媒体で頒布しなければならない。あるいは、

c) 対応するソースコード頒布の申し出に際して、あなたが得た情報を一緒に引き渡す(この選択肢は、営利を目的としない頒布であって、かつあなたが上記小節bで指定されているような申し出と共にオブジェクトコード あるいは実行形式のプログラムしか入手していない場合に限り許可される)。


結論としては「GPLの条件と矛盾する制約を課された状態でプログラムを頒布する」ことがGPL違反となる。

次にマイクロソフトの戦略について。マイクロソフトの狙いは特許クロスライセンス中にGPLの条件と矛盾する制約を入れることで、相手方がLinuxを頒布(販売)するとGPL違反になるように仕向けることだ。これによってLinuxの頒布(販売)を制限することができなくなる。そうすればマイクロソフトのWindowsは現状の独占的地位を維持できる。これがマイクロソフトの特許クロスライセンス活動の基本的な戦略であると思われる。Allison氏も次のように言う。

マイクロソフトの意図はTomTomにGPL違反を犯させること又はLinuxからマイクロソフト製ソフトウェアへ切り替えさせることだ。

このマイクロソフトの戦略はスケールが大きい。GoogleがBook Searchに関してとったクラスアクションを使ってベルヌ条約を逆手にとる戦略(2009/2/25のエントリ参照)ととも米国企業の先進性が見て取れる。

最後にこの戦略の結果はどうなるか考えたい。まずGPL違反を犯すとどうなるのか。端的にライセンスを受けられないわけだから、プログラムの利用(頒布など)が著作権侵害になる。マイクロソフトが著作権を有するコードを含むOSSについてはマイクロソフトが著作権を行使できるだろう。

マイクロソフトとクロスライセンスを締結した多くの企業はGPL違反について検討した上で契約を締結しているのだろうか。特に日本企業では、特許のライセンスを担当する部署とOSSを含めソフトウェアのライセンスを担当する部署が別である場合がある。この場合、両部署の連携がなければマイクロソフトとの交渉においてGPL違反を回避するような対応が取れない可能性がある。Allison氏は次のように断定的に言う。

マイクロソフトと特許クロスライセンスを締結している他の多くの企業はひっそりと(silently)GPL違反を犯している。

これが現実でないことを期待する。ただマイクロソフトがLinuxに対し訴訟という公開の手段をとったということは、彼らがGPL違反の種まきは十分済んだと考えていることを意味するかもしれない。

以上述べたように、特許ライセンスに含まれるある種の制約は結果的にGPL違反をもたらす。マイクロソフトの狙いはライセンシーにGPL違反をもたらすような特許ライセンスの契約を締結することで、Linuxの頒布を制限し、Windowsの独占を維持することである。このようなマイクロソフトのスケールの大きい戦略に対しライセンス契約を締結した企業がどのような対応を取ったのか、今後それが明らかになるか注目したい。
[ 2009/03/10 22:24 ] 知的生産 | TB(0) | CM(0)

Sonar Kollektiv Orchester『Guaranteed Niceness』 

※本エントリは知財とは直接関係がありません。

2009/3/8のエントリで紹介した東工大のセミナーの後、渋谷でCDを買った。学生の頃からクラブ系のジャズは好きでよく聴いていたが、最近はあまりフォローできていない。このSonar Kollektiv OrchesterはVolker Meitzというドイツ人プロデューサーがSonar Kollektivというドイツのクラブ系ジャズレーベルの音源をオーケストラを使って演奏するプロジェクト。「Volker MeitzがSonar Kollektivでオーケストラかぁ、これは買いだ」ということで購入。実際聴いてみるとタイトルどおり「Guaranteed Niceness」である。

ネットに2007年のライブ映像やMeitzのインタビューなどを見つけたので、以下にはっておく。最初の動画「Held Him First」のストリングの入り方なんかはとても自分好み。
[ 2009/03/09 22:57 ] 音楽 | TB(0) | CM(0)

「侵害立証性(侵害立証容易性)のあるところ事件あり」 

2009/2/13のエントリで「侵害立証性のある発明を出願するのが基本的な知財戦略である」と述べた。侵害立証性のない特許を取得しても第三者への活用が困難であるためだ。当然のことだが侵害立証性のない特許が侵害訴訟に用いられることはない。よって侵害立証性のないところに事件はない。今回は今まで当ブログでふれてきた事件が侵害立証性のある分野での事件であることを確認したい。

2009/3/5のエントリで標準化には侵害立証性を高める効果があるというNTTの渡部比呂志氏の論文を紹介した。当然のことだが標準化技術はその内容が公開されるためだ。また先の論文でもふれられているように標準化には侵害の回避を不可能にする効果もある。これらの効果が標準化の分野で特許に関連する事件を起こす要因である。例えば2009/3/6のエントリで紹介したVizioと船井電機の事件である。

同様にOSS(特にGPL)には侵害立証性を高める効果がある。OSSもその内容が公開されるためだ。ここからOSSの分野では特許に関連する事件が起きやすいといえる。他の要因もあって今のところOSSに関する特許問題はそれほど多くないといえるだろう。しかし、例えば2009/3/3のエントリで紹介したマイクロソフトとTomTomの事件のような事件は今後増加する可能性がある。

標準化にしてもOSSにしても「侵害立証性のあるところ事件あり」といえる。よって侵害立証性は重要である。ここから侵害立証性の高い標準化やOSSの分野における特許は重要であるともいえる。
[ 2009/03/09 22:17 ] 知的生産 | TB(0) | CM(0)

東京工業大学MOTセミナー『戦略的知的財産マネジメントの発展に向けて』@東京工業大学 

先日東京工業大学MOTのセミナーを聞きに行った。第一部が元NECの知財部長という京本直樹教授の最終講義、第二部が京本教授にセイコーエプソンの知財本部長 上柳雅誉氏、ソニーの知財センター長 守屋文彦氏を加えたパネルディスカッションという内容だった。

まず京本教授の最終講義について。まさに実務家という印象であった。

「権利化業務が一番の基本である。今、企業は活用業務に力が入りすぎているのではないか。」と警鐘を鳴らしていた。また「現場(知財担当が現場に入っていくこと)の重要性」を強調していた。これらについてはまったく同感である。ただ、このような知識は経験であり「理論といえるのか?」という疑問はある。

次にパネルディスカッションについて。以下、パネリストの方々の発言を筆者がとったメモに基づきひとつの文章にまとめている。内容の正確さは保証できかねるのでご了承いただきたい。

「事業」・「研究開発」・「知財」による三位一体の知財経営といっても現実には難しい。基本的に知財部は事業部へついて行く。知財部から事業部への方向性の提案というのは難しい。ただし研究開発テーマの探査などには知財部も協力する。また標準化については知財部の担当である。

知財経営においては専門性を高めたI型人材ではなく専門性に加え幅広いスキルをもつT型人材が必要となる。従来は担当者は知財実務を広く経験できた。現在は技術の細分化にともない知財実務も細分化されている。よって専門性を高めた後にスキルの幅を広げるのが難しい。特に新卒社員の育成は難しい。

育成の成果をはかるため担当者のスキルを棚卸したところ、大多数の担当者は経験年数が増えてもスキルの幅が広がっていないことが判明した。スキルの幅を広げることができた担当者は知財のコアスキルを身につけていると判明した。ここで知財のコアスキルとは「知財業務における判断力」である。[具体例の説明がなかったが、筆者は侵害の有無の判断や実施許諾の必要性の判断などと理解した。]今後はこの判断力を集中的に育てることとした。

企業にいると新しい発想は得にくい。MOTで幅広く理論を学んだ後、基礎的な実務(例えば権利化)について専門性を高めると役に立つだろう。いきなり実務を担当すると目の前のことしか見えないが、予め理論を学ぶことにより先が見えた状態で実務ができる。これもMOTのメリットである。


全体として共感のできるパネルディスカッションであった。例えば2009/3/4のエントリで「知財は事業に依存する」ということを述べたが、筆者も「三位一体」は現実的でないという印象を持っている。また2009/3/5のエントリでの例が示すように、標準化についてソニーは非常に進んでいると認識しているので「標準化は知財部の仕事」という発言には得心した。

知財担当者のキャリアについては今まで当ブログでふれていないテーマだ。T型人材については2009/2/2のエントリで述べた「理論と経験」「抽象と具体」との関連からその必要性を感じる。例えば新しい知財業務への対応には経験の延長線上ではなく理論が必要だと考えている。2009/2/3のエントリでその例証と思われる事例を挙げた。今回のパネルディスカッションでは「企業にいると新しい発想は得にくい」という発言があった。また理論により「先が見える」、「木だけでなく森が見える」という発言もあった。筆者と同じ趣旨だと(勝手に)理解した。

ただ「企業にいると新しい発想は得にくい」といっても2009/2/25のエントリで述べたGoogleのように理論に基づく新しい発想を実務に落とし込んでいる企業もある。日本の企業からもこのような事例が出てくることを期待したい。

ちなみに守屋氏はやはり蝶ネクタイであった。
[ 2009/03/08 23:48 ] 知財 | TB(0) | CM(0)

「累積ロイヤリティ」はVizioと船井の特許問題の要因である 

2009/3/6のエントリでVizioと船井の特許問題について紹介した。

VizioはITCで敗訴しており2009年4月までにこの特許問題を解決しなければ製品が差し止められてしまうという。なぜ差止めのリスクを背負いつつ徹底抗戦するのか。背景には2009/3/5のエントリで紹介した「累積ロイヤリティ(Royalty Stacking)」問題があるように思える。

日経BPの記事中でVizioが「19型液晶テレビでは,部材費の15%を知的財産権関連の費用が占めている」と言っている。これに船井のロイヤリティが蓄積されると、差止めを免れたとしても事業が立ち行かなくなるのだろうか。もしそうならば「累積ロイヤリティ」の問題が差止めと同程度に大きなリスクだということだ。

また、この事件は差止め(や「累積ロイヤリティ」)というリスクを回避するためならば、企業は「あらゆる手を打つ」ことの例証ともいえる。既にVizioは船井に対し反トラスト法でも訴訟を起こしている。例えばこの記事

(自分も含め)企業知財の担当者は視野が特許に限定されがちだが、この事件くらいもつれると反トラスト法を含め「あらゆる手を打つ(打たれる)」ことを想定する必要がある。
[ 2009/03/07 22:51 ] 知的生産 | TB(0) | CM(0)

御礼1000PV 

当ブログへのアクセスが1000PVに達しました。知財分野の更に一定の分野に偏った内容にもかかわらず、思いのほか多くの方に読んでいただき本当に感謝しています。

これからも理論と実務の観点から少しでも読む価値のあるブログを目指していきたいと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。
[ 2009/03/07 21:21 ] その他 | TB(0) | CM(2)

VizioがRAND条件をめぐってFCCに嘆願書を提出 

2009/2/17のエントリでふれたようにRANDとは「Reasonable and Non Discriminatory」の略で「合理的かつ非差別的な」という意味である。しかし何が合理的なのかハッキリしない。2009/3/5のエントリで紹介したNTT渡部比呂志氏も「RAND条件によるライセンスを表明した企業は,自らが『合理的』と信じるロイヤリティを設定しますが,どの程度までが合理的なのか不明」という。この「RAND条件とは何か?」という問題についてFCC(Federal Communication Committee)に判断を求めるという珍しい事件が起きた(日経BPの3月1日付記事参照)。FCCに解決を求めたのは米国のTVベンダーVizioであり、相手方は船井電機である。今回はこの事件の簡単な経緯を紹介し、問題点を考えたい。

船井は2007年9月フランスのThomsonから特許を購入した。同年10月船井はVizioらを特許侵害でITCに提訴した(船井のプレスリリース参照)。船井の提訴特許はFCCの定めたデジタルテレビ技術標準「ATSC」の必須特許であった。VizioによるとFCCは「ATSCに関するすべての特許保有者はRAND条件でライセンスしなければならない」と義務付けていた。よって船井はRAND条件でVizioにライセンスしなければならない。そこでVizioは船井の提示したライセンス条件がRANDではない、と主張しFCCにライセンス条件の変更命令を求め嘆願書を提出した。

しかしVizioは2009年2月ITCで敗訴している(船井のプレスリリース参照)。ITCでの敗訴は差止めを意味する。Vizioのいうように「FCCがすべての特許保有者にRAND条件でのライセンスを義務付けている」のなら、なぜITCは船井に差止めを認めたのか疑問である。

ATSCのパテントポリシーには確かに必須特許は「RAND条件でライセンス」とある。しかし船井はATSCのメンバーのリストには見当たらないので、アウトサイダーなのではないか。よって上述の「FCCがアウトサイダーを含めすべての特許保有者にRANDを義務付けているのか」という点が問題となる。

またこの事件を複雑にしているのは船井はアウトサイダーであってもThomsonはATSCのメンバーであることだ。ATSCの標準化は2004年で特許の譲渡が2007年である。この点も問題となるだろう。
[ 2009/03/06 23:14 ] 知財 | TB(0) | CM(0)

JASRACなどが「著作権情報集中処理機構」を設立 

JASRACなどが著作権の集中管理団体を新たに設置するという(日経の3月5日付記事参照)。2009/2/28のエントリで述べたように「著作権の集中管理による取引コストの低減」が著作物の利用促進に有効である。この記事もその流れの上にある。記事中でも2009/2/26のエントリでふれた「著作権の藪」「アンチコモンズの悲劇」による著作物の過少利用が特に問題となるTV番組のネット配信の利用促進が挙げられている。

 音楽配信事業者の団体と日本音楽著作権協会(JASRAC)などは、音楽のインターネット配信に伴う著作権の使用料支払いに必要な情報を、一括して扱う組織を共同で設置する。権利処理が複雑なコンテンツのネット配信を促すことにつながる。将来は映画やアニメなどを対象にする可能性もあるという。

 ネットワーク音楽著作権連絡協議会(NMRC)に加入する複数の配信事業者が基金を拠出し、一般社団法人「著作権情報集中処理機構」を今月中にも都内に設立する。JASRACやその他の著作権管理事業者は、同機構が運営する著作権情報処理システムの運用コストなどを分担する方向だ。同機構は2010年4月のサービス開始を目指す。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20090305AT1D0409304032009.html


ただし、この団体設立と「包括徴収」は別問題なので、公取委のJASRACに対する排除措置命令には影響しないとは思うが。
[ 2009/03/06 22:35 ] 知財 | TB(0) | CM(0)

パテントプールによる累積ロイヤルティの低減 

2009/3/3のエントリでOINのCEOとして紹介したJerry Rosenthal氏は既にOINを辞し、次の仕事に移っているようだ。それはソニーらが立ち上げる光ディスクのパテントプールの管理会社CEOである。

このパテントプールはCD、DVD、BDをまとめてライセンスするという(ソニーのプレスリリース参照)。

これはパテントプールの「ロイヤリティの総額(累積ロイヤリティ)を抑える」機能の例証といえる。「累積ロイヤリティ(Royalty Stacking)」の問題とは標準化技術に関する必須特許を所有する特許権者が複数いた場合、各特許権者に支払うロイヤリティは小額でもそれが蓄積し総額としてはロイヤリティが多額になってしまう問題をいう。例えばある標準化技術の必須特許に売上げの1%をロイヤリティとして支払う場合、50件の必須特許があれば50%、100件あれば100%となってしまう。この「累積ロイヤリティ」は「特許の藪」(一つの技術に多数の特許が成立する状況)において問題となることが分かるだろう。典型的にはエレクトロニクス産業である。ソニーのプレスリリースによれば今回のパテントプールでライセンスを受けるとCD、DVD、BDを個々にライセンスを受ける場合よりも40%「累積ロイヤリティ」が安いという。

このようにパテントプールが「累積ロイヤリティ」を抑える機能を果たすのは、パテントプールのメンバーが予め合理的なライセンス料率を定め、徴収したロイヤリティをパテントプールのメンバーで分配するためである。ロイヤリティの分配についてNTTの渡部比呂志氏の論文に具体例がある。

この論文には今考えている「累積ロイヤリティ」の低減以外にも「取引コスト」の低減、高い侵害立証性、高い回避不可能性といったパテントプールの機能・効果がまとまっている。また「必須特許数を水増しするために発明のカテゴリごとに別出願するとよい」といった実務のノウハウも紹介されている。

この「累積ロイヤリティ」の低減機能もアウトサイダーが存在する場合や、一つの標準化技術に複数のパテントプールが存在する場合は十分に発揮されない。DVDの場合、3Cと6Cという2つのパテントプールが存在し、DVD製品を実施する場合、少なくともこの2つのパテントプールからライセンスを受ける必要がある。よって本パテントプールにおいても(常に問題となることだが)必須特許の特許権者をどれだけ多く参加させられるかが問題となる。
[ 2009/03/05 22:44 ] 知財 | TB(0) | CM(0)

事業上の優位性に基づいて実施料収入を得る 

2009/3/3のエントリでマイクロソフトのFAT特許を解説していたBruce Peres氏のサイトに以下の文章がある。

FATはマイクロソフトによって提供されていたファイルシステムである。よって、ほぼすべてのフロッピーに採用された[MS-DOSがフロッピーで提供されていたことを指しているのだろうか]。アップルもマイクロソフトと互換性をとるためFATを実装した。

その後、すべてのUSBメモリとSDカードがWindowsに対応するためFATを採用した。これらのリムーバブルメディアは販売時にFATでプリフォーマットされている。他のメディアもMSとの互換性のためFATを実装した。

こうしてFATはリムーバブルメディアのデファクトスタンダードとなった。しかし、これは特許が埋め込まれたスタンダードであり、現在マイクロソフトはスタンダードに対する実施料を要求している。

FATをここまで普及させたのはマイクロソフトの技術力ではなくデスクトップ市場における独占を利用したマーケッティングの力だ。マイクロソフトが自分のOSにFATを選択したという理由だけでマイクロソフトは他社に実施料を支払うよう要求することができるのだ。

http://itmanagement.earthweb.com/osrc/article.php/3807801/Bruce-Perens-Analyzing-Microsofts-Linux-Lawsuit.htm

これは「特許の優位性に基づいて事業上の優位性を築くことより、事業上の優位性に基づいて実施料収入を得ることの方が容易である」ことの例証ではないか。「知財は事業に依存する」という(知財関係者にとっては)重い事実を再確認させられる。

標準化団体(SSO)による技術標準であれば、技術標準が確立してから特許権を行使する行為は「特許の待ち伏せ(patent ambush)」として独禁法の問題となるが(「Rambus事件」)、FATのようなデファクトスタンダードであれば問題ないのだろうか。
[ 2009/03/04 22:42 ] 知財 | TB(0) | CM(0)

MicrosoftがTomTom社をLinux関連特許の侵害で提訴 

2009年2月25日マイクロソフトがカーナビメーカーのTomTom社を特許侵害で提訴したという。例えばこの記事。今回はこの訴訟についてLinuxとの関連から解説したい。

まず、この訴訟の背景には以下の二つの流れがある。

第一の流れは、近年マイクロソフトが多くの企業(家電メーカなど)と特許のクロスライセンス契約を締結しているということだ。2003年以来500件以上のライセンス契約を結んできたというのだからスケールが大きい。最近では例えば2009年2月のブラザー工業である。このクロスライセンスの相手企業にはカーナビメーカーも含まれている。例えばアルパインケンウッドパイオニアである。

今回の提訴もTomTom社とクロスライセンス交渉の決裂の末だという。

第二の流れは以前からマイクロソフトがLinuxなどFOSS(Free and Open Source Software)は自社の保有する特許235件を侵害すると主張していたことだ。例えばこの記事

そしてマイクロソフトは今回の提訴特許8件のうち3件をLinuxカーネルが侵害すると主張しているという。これが本訴訟をLinuxとの関連で注目すべき理由である。

そこで、まず提訴特許8件の特許番号とタイトルを見ると以下のようになっている。

①5,579,517 Common name space for long and short filenames.
②5,758,352 Common name space for long and short filenames.
③6,175,789 Vehicle computer system with open platform architecture.
④6,202,008 Vehicle computer system with wireless internet connectivity
⑤6,256,642 Method and system for file system management using a flash-erasable, programmable, read-only memory.
⑥6,704,032 Methods and arrangements for interacting with controllable objects within a graphical user interface environment using various input mechanisms.
⑦7,054,745 Method and system for generating driving directions.
⑧7,117,286 Portable computing device-integrated appliance.

このリストはBruce Perens氏の解説による。Perens氏はEric RaymondとともにOSI(Open Source Initiative)を設立した人物である。

このうち③④⑦はタイトルから明らかにカーナビに関する。はGUIに関するものである。も従属項に「vehicle」とある。よってLinuxカーネルに関連する特許は①②⑤の3件だと思われる。

これら3件はWindowsのファイルシステムであるFAT(File Allocation Table)に関する特許である。現在ほとんどのLinuxディストリビューションがFATをマウントできるようだ。よってほとんどのLinuxディストリビューションがこれらの特許を侵害するおそれがある。

3件のうちの基本特許①は以前から問題視されていたようで、PUBPAT(Public Patent Foundation)という団体が2004年にre-examinationを請求している。Office Actionは出されたようだが、補正により権利は維持されたという。PUBPATのサイトこの記事を参照。

これら3件の特許が訴訟を経て有効性を維持できるかが注目される。マイクロソフトは自社の特許の有効性に自信がなければ特許番号を公開することになる訴訟は避けたいと考えるだろう。今回はこれらの特許にre-examinationという経緯があるため訴訟に使ったのだろうか。

「Microsoftが,Linuxに侵害されたという特許を具体的に示さないのはなぜか。実際には存在しないから、有効ではないから,あるいは簡単に回避できる特許だからではないか」とOIN(Open Invention Network)のCEOJerry Rosenthal氏は言っていたが、OINは無効化に向けなにか手を打ってくるだろうか。
[ 2009/03/03 23:25 ] 知財 | TB(0) | CM(0)


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