社内弁理士のチャレンジクレーム

チャレンジクレームとは「実務家の間に通用する俗語で『だめもと』のチャレンジ精神で審査を受ける限定の少ない広いクレーム」をいいます。社内弁理士が「だめもと」で抽象的な理論と実務の架橋を目指します。

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米国模擬裁判(Mock Trial)のWeb動画 

今回はある先輩から教えていただいた模擬裁判(モック・トライアル)のWeb動画を紹介したい。それは訴訟専門の米国法律事務所Quinn Emanuelの東京オフィスが「日本初の本格的模擬裁判」と銘打って公開しているものである(動画配信ページはこちら)。

Quinn Emanuel東京オフィスの代表は著名なヘンリー幸田先生だ。この動画はヘンリー幸田先生含め以下の6名の方が2008年9月25日に行った模擬裁判のセミナーの録画である。

原告側弁護士はQuinn Emanuelの創設者の一人ジョン・クイン弁護士、被告側弁護士はウィリアム・プライス弁護士である。

玉井克哉氏(東京大学教授)
ライアン・ゴールドスティン(弁護士:当事務所 東京オフィス 共同代表)
ヘンリー幸田(弁護士:当事務所 東京オフィス 共同代表)
マイケル・ヤング(ユタ大学学長)

【スケジュール】
日時:2008年9月25日(木)
場所:ザ・プリンス パークタワー東京 地下2階 ボールルーム
受講料:無料(テキスト代、お茶代、懇親会すべて無料)

13:00-13:30 イントロ、裁判(案件)の説明、訴訟戦略
13:30-15:00 冒頭陳述、証人尋問の戦略及び説明
15:00-15:20 コーヒーブレイク
15:20-16:50 証人尋問、最終弁論、陪審員説示の戦略及び説明
16:50-17:00 休憩
17:00-17:30 陪審評議
17:30-18:00 ディスカッション、Q&A
18:00~  懇親会(お飲物と簡単なおつまみをご用意しております)
http://www.quinnjapan.com/



動画は全部で5時間22分という長大なもので一度にすべて見るのは難しい。筆者もすべて見終わったわけではない。ただ、先の動画配信ページの中央上方のタブ「テキストスライド一覧」に目次と時間の一覧があるので、これにより少しずつ見ていくことができる。この「テキストスライド一覧」では5時間22分を450項目に分けてある。スライド10(10/450)が模擬裁判の概要説明でスライド11(11/450)からTrialが始まる。

模擬裁判で取り上げている案件は主に契約に関する訴訟であり、特許侵害訴訟そのものではない。それでも冒頭陳述、証人尋問、最終弁論、陪審員説示、評議・評決といったTrialの流れは同様である。「日本初の本格的模擬裁判」とのことだが、模擬裁判としてネット上で公開されている資料としてはたいへん充実したものだと思う。少しずつでも一度通して見ると米国におけるTrialの全体像が把握できて有用ではないだろうか。
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[ 2009/04/04 23:41 ] 知財 | TB(0) | CM(0)

間接侵害罪(特196条の2)には疑問がある 

2009/3/24のエントリ2009/3/29のエントリでも知財法の罰則について述べたが、今回は間接侵害罪(特許法196条の2)について書きたい。

この間接侵害罪(特許法196条の2)は先のエントリでもふれたH18年法改正により新たに規定された。その結果、間接侵害の刑は直接侵害のそれよりも軽くなった。この法改正以前は直接・間接問わず特許侵害罪として同じ刑であった。弁理士試験の勉強をしていた頃、この点が疑問であった。「なぜ直接侵害と間接侵害で同じ刑なのか?」ということである。間接侵害は予備的・幇助的行為であるというのだから間接侵害罪は予備罪といえる。では、なぜ直接侵害と同じ刑なのか。しかし先に述べたようにこの問題はH18年法改正により解消された。

ただ、そもそも間接侵害罪の存在意義には疑問がある。

その理由は予備罪は「重要な犯罪」のみにもうけられるものであるが、それらの「重要な犯罪」と比べ特許侵害がそれほど「重要な犯罪」とは思えないためである。法律用語辞典の「予備」の項目にも次のようにある。

未遂犯と異なり、刑法総則において、一般的な可罰性が認められているものではなく、重要な犯罪について例外的に処罰される(有斐閣法律用語辞典[第3版])


予備罪がもうけられている「重要な犯罪」とは何かというと殺人、強盗、放火、外患誘致、内乱などである。人命にかかわるような犯罪ばかりである。

一方、特許侵害が人命にかかわることはあまりないように思う。逆に特許侵害を避けることが人命にかかわることはあると思う。例えば医薬品の特許について「特許を侵害してしまうので国民が医薬品を入手できない。人命にかかわる問題であるから強制実施許諾をする。」という場合である。そういえば今年の中国特許法改正にも医薬品に関する強制実施許諾についての事項が含まれている。
[ 2009/04/01 22:52 ] 知財 | TB(0) | CM(4)

MicrosoftとTomTomの和解と対Linux戦略 

2009/3/3のエントリ2009/3/10のエントリで紹介したマイクロソフトとTomTomの訴訟であるが、和解が成立したようだ(3月31日付ITMedia記事参照)。今回はこの和解についてマイクロソフトの対Linux戦略の観点から述べたい。

この訴訟は提訴特許にTomTomが製品に組み込み販売しているLinuxが侵害すると思われるマイクロソフトの特許が含まれていたため注目された。この特許はFAT(File Allocation Table)に関するものである。これによりマイクロソフトの対Linux戦略が訴訟という公開の手段により初めて行われることとなった。従来この戦略はクロスライセンス契約の交渉という非公開の手段により行われていたと考えられる(2009/3/3のエントリ参照)。

マイクロソフトの対Linux戦略とはライセンシー(本件ではTomTom)に「GPLの条件と矛盾する制約を課された状態でプログラムを頒布する」ことによりGPL違反を犯かせることである。これによりLinuxの頒布を制限し、Windowsの独占を維持することができる(2009/3/10のエントリ参照)。

今回の訴訟でマイクロソフトの対Linux戦略は成功したのだろうか。マイクロソフトのプレスリリースによれば「本和解契約を締結することによりTomTomがGPL違反になることはない」とのことである(マイクロソフトのプレスリリース参照)。

The agreement includes patent coverage for Microsoft’s three file management systems patents provided in a manner that is fully compliant with TomTom’s obligations under the General Public License Version 2 (GPLv2).



なぜGPL違反にならないのか詳細な理由は分からないが、TomTomがそもそもFAT特許のライセンスを受けていない可能性がある。その理由はTomTomが2年以内にFAT特許を回避するよう設計変更(design around)するということが明らかにされているためである。その2年以内の侵害についてもTomTomのエンドユーザが直接保護されるという。これもTomTomはライセンシーではないかのような表現だ。

TomTom will remove from its products the functionality related to two file management system patents (the “FAT LFN patents”), which enables efficient naming, organizing, storing and accessing of file data. TomTom will remove this functionality within two years, and the agreement provides for coverage directly to TomTom’s end customers under these patents during that time.



TomTomがライセンスを受けなくともエンドユーザが保護されることはありうる。例えばエンドユーザに対する権利不行使の条項を契約に含めることである。

このように見てくると今回の訴訟でマイクロソフトはTomTomをGPL違反に陥れることができなかった。よって今回の訴訟に限っては戦略が成功したとはいえないのではないだろうか。また今後マイクロソフトのライセンス交渉の相手方企業はGPL違反について警戒してくるはずである。よってこの訴訟は失敗のようにも思える。

ただ、Linuxに対する特許侵害訴訟を提起した時点で注目が集まりマイクロソフトの対Linux戦略が明らかになることは彼らにも予想ができたはずである。彼らはGPL違反の種まきは十分済んだと考えているのかもしれない。
[ 2009/03/31 23:55 ] 知財 | TB(0) | CM(0)

TLOが失敗する理由 

先日、ある先輩にある大学の研究会に誘っていただいた。その研究会が「産学連携による技術移転」に関する活動をしているためである。

何も分からず行ってみると研究会に参加されていたメンバーの方々が大変な人たちだった。その大学の出身で経営者や大学教授の方々だ。(当たり前だが)皆さん非常に深く広い知識と経験をお持ちで、情熱的かつ合理的であった。

研究会での議論の内容を書くのは適切ではないと思われるので、今回はあるメンバーの方がされた産学連携についての発言を紹介したい。

その発言の趣旨は「TLOが失敗する理由は(弁理士など)特許実務家の人たちを集めてやっているからだ」というものである。加えて「東大TLOが成功した理由はリクルートの人を連れてきたからだ。産学連携による技術移転には特許実務の能力よりもマーケティング力が重要である。特許実務の能力だけがある人たちは世の中にたくさんいる。」という。<リクルートの人>とは東大TLO山本貴史社長のことだろう。

では「産学連携による技術移転」の具体的な内容とは何だろうか。東大TLOのサイトで大学発明が企業に移転されるまでの具体的なステップを紹介している。以下の5つのステップである。①発明届出(職務発明としての認定を含む)、②出願検討(特許性・市場性の検討)、③特許事務所へ出願依頼、④マーケティング、⑤ライセンシング。

④以外は特許実務といえる。実際に筆者も企業知財の担当者として経験したものだ。しかし問題なのはその④である。ここで「④マーケティング」とは大学発明について「市場の将来性を想定して、開発力と販売力をもち、さらに、技術のコマーシャライズに最もモチベーションの高い企業を特定化して1社1社と直接交渉を行」うことである(東大TLOのサイト参照)。これは普通の特許実務家には難しいだろう。例えば世界レベルの広いコネクションがなければできないためだ。

また先の研究会では「特許実務家の場合、大学内でのコネクションすらない」という問題も指摘されていた。

特許実務すらまともにできない自分にとっては<厳しい現実>という印象だ。ただ産学連携の現実を大学の立場から考えれば「どこからお金を引っ張ってくるか」という問題が一番大きいのだろうから、産学連携のステップのうち「④マーケティング」が一番重要なのも当然のようにも思える。<厳しい現実>を認識できたという意味でもこの研究会に参加でき有意義であった。
[ 2009/03/30 22:02 ] 知財 | TB(0) | CM(2)

知的財産権侵害罪の適用状況 

2009/3/24のエントリにおいて知財法における侵害罪の構成要件該当性の不明確さについてふれた。実際に適用された事例はどれくらいあるのだろうか。今回はこの点について書きたい。

個人的な印象としては商標権侵害罪や著作権侵害罪による容疑者の逮捕というニュースはよく耳にするが特許権侵害罪ではあまり聞かない。

調べてみると平成18年版の「警察白書」「知的財産権侵害事犯の法令別検挙状況の推移(平成13~17年)」という表が掲載されていた。この表によると印象どおり商標法と著作権法が知財侵害事犯の大半を占めている。例えば平成17年度では知財全体の件数で約98%と人数で約95%を商標法と著作権法が占める。これに不競法を加えるとほぼ100%である。一方、特実意の三法ではほとんど適用された事例がない。

またH18年法改正の際、日弁連が提出した意見書(pdfファイル)は「他刑との併合罪を除けば知的財産権侵害行為に対して、実刑判決が下された事例は皆無に等しい。」という。

ちなみにH18年法改正には刑事罰の上限が引き上げが含まれていた。先の意見書は刑事罰の上限引き上げに反対するものである。
[ 2009/03/29 22:44 ] 知財 | TB(0) | CM(0)


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